大判例

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東京高等裁判所 昭和36年(う)2065号 判決

被告人 中村清

〔抄 録〕

起訴状に記載する所によれば、本件公訴事実は、被告人は原審相被告人八木良子と共謀の上、脱税認定の基礎資料となるべき、南税務署宛の不正事実確認書を秘かに持ち去り破棄しようと企て、右税務署員種子島貢が「キリン座」において入場券の売り上げ状況等の調査に従事している隙を窺い、同人が右映画館事務室の机の上に置いていた、同映画館に対する入場税課税の基礎資料たる入場税檢査簿一冊及びこれに挿入してあつた前記確認書一通その他を情を知らざる高橋常雄をして、ひそかに右事務室の外に持ち出さしめた後、同人よりこれを受け取り、次いで同夜飲食店「鳥円」において、右確認書を引き破り、その他の書類は或は焼却し或は隠匿したというのであるが、原審公判の審理の経過を記録にもとづいて調べてみるに、右公訴事実は証人高橋常雄その他の証人を取り調べることによつて逐一究明されているのである。ところで、訴因たる公用文書毀棄の罪が右一連の事実の中どこに成立するかは、まつたく法律上の判断である。おもうに、公用文書毀棄の罪は、公務所の用に供する文書を公務所をして使用することのできないようにする所為によつて成立するのである。それ故、公務員が必要あつて置いてあつた公用文書を、ひそかに他の場所へ持ち去り、もつて、公務員をして一時たりとも使用することができないような結果を来たさしめるならば、該持ち去るというがごとき所為は、まさに公用文書毀棄の罪を構成するものといわなくてはならない。してみれば、その後において該書類を或は引き破り、或は焼却、隠匿等したとしても、これらは事後行為をもつて論ずべきものであつて、公訴事実として指摘された、これらの部分は犯罪成立の後の情状を示したものと解して妨げないのである。原判決は、これと同一の見解に立ち、被告人に対して公用文書毀棄罪の責任を問うに当り、所論のごとく「高橋常雄をして入場税檢査簿一冊およびこれに挿入してあつた確認書を奪取せしめ」た旨を判示し、もつて証拠によつて明らかである、高橋常雄をしてひそかに持ち出させた所為について右罪の成立を認めたのである。原判決には何等非難さるべき廉はない。

(尾後貫 堀真 鈴木)

注 本件は量刑不当で破棄

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